喜一の味
喜一の味は、今まで喜多方になかったものだ、と言われることがあります。
これは、私が洋食からこの世界に入ったことに関係しているかもしれません。
スープと麺とチャーシュー、それぞれが引き立て合ったとき生まれる絶妙な味のバランス。
毎日の仕込みは、ただそれだけのためにあるのです。
ゆでる前のひと手間、多加水平打ち麺を手もみして独特のコシをもたせます。
喜一のこだわり
毎朝、まだ陽も昇らぬ中、凛とした空気に包まれた厨房にて冷たい仕込み水を寸胴鍋に汲むところから、一日の仕込みが静かに始まります。
この冷水の一滴一滴が、今日も変わらぬ味の礎となるのです。
そして、チャーシュー用のブロック肉の下ごしらえに取りかかります。筋や血管を一本一本丁寧に取り除いていきます。ほんのひと手間かもしれませんが、この手間こそが、仕上がりに大きな違いを生み出すと私は信じています。素材に正面から向き合い、丁寧に、真摯に、手をかけること。それが私の料理に対する姿勢です。


ここ福島県喜多方市は、冬になると厳しい寒さに包まれます。街も山も、一面真っ白な雪に覆われ、静かな美しさに満ちています。しかしその雪は、春になるとゆっくりと溶け出し、地中へと染み込み、やがて伏流水として地を潤します。あるいは、川となって町を流れ、自然の恵みを育むのです。
この豊かな伏流水こそが、喜多方の自然、そして地元で育まれる野菜、日本酒や味噌、醤油といった醸造品の礎になっています。もちろん、喜多方ラーメンの味の決め手も、この清らかな伏流水にあると私は考えています。
喜多方の自然の恵みに感謝し、素材の力に敬意を払い、そして支えてくださるメーカーの皆様やお客様への感謝を胸に、一杯一杯、心を込めてラーメンをお作りしております。